第402章「しかし、本当に姉さんのアソコから赤ちゃん出てこられるのかしら?」
有紀は、まじまじと私のお腹を眺めながら、そんな疑問を口にした。
そし、次の小籠包を箸の先で弄びながら、器用に口も動かしていた。
「大丈夫だろうと言うのが、櫻井先生の意見だったけどね。彼の考えでは、想像以上に筋力があるし、子宮頚も短くなってきているし、柔軟性もあるようだから、促進剤の効き目次第だけど、一週間以内には産めるだろうと予想しているみたい」
「話にしか聞かないけど、スイカをアソコから出すくらい痛いって話でしょう。耐えられるのかな?」
「大丈夫でしょう。だって、沢山の人が子供を産んで、殆どの人が死んいでるわけじゃないからね。痛い人は、凄く痛いようだけど、それ程苦痛はなかったって人も結構いるからね。体質にもよるんじゃないの。それに、櫻井先生が言うには、胎児の大きさが未熟児状態だから、3000グラムの出産よりは、物理的に楽なはずだって」
「あぁそうか、普通が3000くらいだとして、姉さんの場は、どの位の胎児が産まれるわけ?」
「1800前後だからね。子宮に押し出す力さえあれば、物理的には楽なはずだから……」
「つまり、産まれる痛みの問題より、押し出される状況によりけり、そこが問題なわけってことか」
「多分、そう云う意味だと思うよ。まあ、その出産の後に、恐怖の抗がん剤治療が待っているからね、その怖さを思えば、前哨戦の出産への怖さは、自動的に和らいでいるのかもしれないけど……」
「そうね、そっちの方が大変だろうからね。それを思うと、姉さんって、凄い決心したもんだよね。白血病だけで、気が狂いそうなのに、あえて、出産、それも自然分娩を選択するんだから、精神構造が普通と違うのかも?」
「どうして、ああいう選択になったのか、今になると、自分でも、よくは判らないのよ。
ただ、色んなことを試されている感じがしたのね。多くのことが順調だった女に、天が下した試練だとしてさ。
無神論者の私としては、混乱なく、無事通過してやるぞってね。
何だろう、運命に正面から向き合うしかない、そんな感情がムカムカしていたんだと思うんだよね」
「今は、そのムカムカな気持が少なくなったとか?」
「敢えて分析すればだけど、今聞かれても、多分、返事は同じになるだろうな。
まあ、最悪、胎児に危険が及ぶ状況になったら、帝王切開に切り替えるからって言われているので、その辺は、狡いけど、安心している面もあるね。そこまで、自然分娩にこだわるのも、根拠薄弱だし・・・・・・」
「そんなに凄いこだわりが、あるわけじゃないのか。だったら、初めから痛い思いしない帝王切開を選んでも良いのに……」
「いまさら、そう言うことも出来ないし、初めからギブアップするのも嫌だからね。やっぱり、相応の痛みは甘受するのが、母の自慢話に釘を刺せるしね」
「まさか~!まさか,姉さん本当にそこまで考えたの?」
「いま、気がついただけだよ」私は悪戯っぽく笑った。有紀もつられて笑い、それぞれに唯我独尊の母親を思い出していた。
「そう言えば、アンタ何だか、お宝がどうしたとか言っていたけど、あれって、どう云う意味なの」
「あぁ、その話、しようと思っていたんだっけ」
有紀は立ち上がって、ベッドルームに向かった。そして、ごそごそ音を立てていたが、小さな紙袋と重量感のある包みを持って戻ってきた。
テーブル中に拡げられた食べ物をどかせた部分に、有紀はおごそかな手つきで、そのお宝を並べ始めた。
金の延べ板らしきものが、5枚並べられた。そして、その半分くらいの延べ板が全部で10枚並べられた。
「これって、本物なの?」私はおバカな質問をしていた。
「本物だよ。チャンと三菱の刻印打たれているし。凄いでしょう、ご褒美貰わないとね」
「ホントだ。本物みたいだね。これって三菱マテリアルの本物だね。まあ、竹村の家に、偽物が有る意味はないだろうけど……」
「そう、本日の相場で、だいたい6キロだからね、ザックリ見積もって2千6百万円くらいのお宝よ」
「2千6百万円、解体しちゃうところだったね……。でも、これって何処で見つけたの?」
「例のバックとか、服とかコートを全部出して、めぼしいものの整理が終わった後で、コーラ飲みながら一服していたんだけど、膨大な数の靴箱が重なった一番下の方に、なぜか気になる箱が目に入ったのよ」
「金色に光っていたの?」
「馬鹿ね、そんなわけないでしょう。でも、重なっている靴箱よりも、何だかオーラが出ている箱だったんだよね。まあ、ただ何となく、そう感じただけで、私が欲たかりだった所為もあるんだろうね、折角だからお宝をゲットしたいって気持ちが、感じさせてくれたのかも」
「そういう事ってあるんだね。世にも不思議な物語だよね」
「そう、欲たかりの割には、これ見っけて、本物と確認できた時は、腰が抜けたようで、しばらく動けなかったよ。佳代子さんって、もしかすると、庭にも何か埋めているんじゃないか、そんな気分で、ここまで辿りついたんだから」
「そういう気になるのも判る気がするね。有紀がもっと調べたいのなら、もう暫く、あいだを開けてから解体でも構わないけどね」
「そうね、でも多分、これが最後じゃないのかな。それに、解体する場合、基礎の土台部分のコンクリを除く程度でしょう。庭に埋めたのなら、後からだって探す権利は、姉さんにあるわけだし」
結局、これで宝探しは終わりにしたが、金の延べ板は、有紀が適当に換金して、手に残った現金を折半してしまうことで、話がついた。それ以外にも、金目の宝石類が見つかっていたが、それは、有紀の収穫と云うことで、有紀の本日の手間賃と云うことにした。
そんな棚ボタにであった所為か、明日の入院には、有紀が付き添いを買って出てくれた。
正直、独りで入院して、独りで出産し、治療を受けている間に死んだら、幾分淋しいなと思っていただけに、心強い一言だった。
つづく
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