第401章マンションに着いて、自分の部屋を見上げると、明かりが確認できた。吉祥寺の作業の方が順調に片付いたようだった。
部屋に入ると、有紀がご機嫌な顔で迎えてくれた。
既に、ワインをちびちび飲みだしていた。テーブルに、どこで仕込んだものか、かなり豪華なオードブルが並べられていた。
「お帰りなさい。どうだった、診察の方は?」
「うん、ハッキリは判らないけど、子宮の状態が良いようだから、明日から治療っていうか、分娩促進の施術に入りましょうって」
「えっ!もう入院するの?」
「そう、明日から入院になっちゃったよ」
「そうかぁ、そうなるのは判っていたけど、何だか慌ただしいね」
「そうなんだよね。なんだか、あまり上手く頭が回っていないので、この流れに乗ってしまって良いのかどうか、考えている暇がなくてさ」
「良いんじゃないの、その流れに乗ってしまえば。はじめから、充分に吟味しておいた事だから、今さら考えることがないってだけだと思うけど」
「そうだね、あまりにも、自分の予定通りに物事が進んじゃうから、何だか気持ち悪くなってきちゃって……」
「わかる、わかる、そう云うことってあるよね。でもね、姉さんの考えが、現状を打開する最良の方法選んでいたから、病院の方も、その決意に合わせて動いている内に、ことが上手く運び出したのよ。ついていないようだけど、実はついているのよ。こう云うのも、きっと運だと思う」
「そうね、そう思うしかないかな。ただ、今まで、自分の考えだけで生きてきたからね、運に身を任せるのが怖いのかもね」
「私なんか、年中、運任せな生活してたからさ、馴れているけど、大丈夫だよ。案外、人間って概ね運が良いものだからさ。それよりも、ワインとか飲んでも大丈夫かな?」
「さあ、どうなんだろう。特に何も注意されていないからね、少しなら大丈夫だと思う。それに、飲みたい気分だしね」
「じゃあグラス出すから、姉さん、お風呂に入ってきたら」
「あぁそうか、手も洗ってないし、何だかぼんやりしてたよ」
「シッカリ、手と顔も洗いなよ。シャキッとなって飲めば、幾分落ち着くから……」
「そうだ、有紀の方はどうだった?」
「順調に終わったよ。少し、ご機嫌なくらいの収穫まであったから、後で、ゆっくり説明するよ」
「そう、順調なら良かった。じゃあ、後は解体しちゃって良いってことね」
「そうね、欲をかけば、もう一日くらい家探しすれば、なにかお宝が出てきそうな気もするんだけどね、時間的にきついかもね」
有紀が、思わせぶりな言い方をしたが、聞き返すことは後回しにして、バスルームに向かった。
「あのさ、中華って注文しちゃって良いかしら」
有紀がバスルームの扉越しに声をかけてきた。
「あのオードブル食べて、まだ食べられるかな?」
「あれね、見た目よりも、美味しいもの少ないのよ。多分半分は、食べたくない代物だよ。あそこの中華の方が断然美味しいから」
特別、注文しておきたいものは、と聞かれたので、思わず酢豚と答えた。
答えた後で、私は、私は本当に酢豚が食べたいのかどうか、自分に確認してみたが、特別に食べたいわけではなかった気がしたが、明日からのことを考えなければと、頭を切り替えようと試みた。
しかし、お湯のぬくもりが、優しく包み込むものだから、考える前に、何度かウトウトしてしまった。
数回、そんなことを繰り返すうちに、私の頭はリフレッシュされていた。目の前の霧がすっかり消えて、明日からの、スケジュール表が、エクセルのグラフのように表示された。
つづく
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