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終着駅88 ゴムの長手袋の腕が股間に伸び


第88章

「よし、こうなったら最後まで見てやろうじゃないか」圭は、缶ビールを握りつぶすと、ごみ箱方向に投げ捨て、リモコンを再度手にした。

真っ黒の画面に何度か稲妻のような模様が瞬間的に浮かび上がった
その稲妻らしき白い光が、意図的なものか、技術的ミスなのか、判断はつかなかった。

そうして、次のシーンが映し出された。今度のシーンでは、シーツが大きく捲られ、乳房が露わにされていた。ゴムの長手袋の腕は股間に伸びたままだったが、黒いラテックスか何かのマスクを被った人間の肩や背中、頭部が映し出された。

カメラのアングルが映し出されている角度から考えてみると、最低でも二台以上の角度から、その映像は作られているようだった。その別々のカメラの映像を、細切れのように作り込む執拗さが作り手の粘着力のある資質を表しているようだった。

その人間は装いに反して、意外にも正常な性的行為の手順を踏んでいた。左のゴム手袋の腕で、乳房を入念に愛撫し、ラテックスの覆面から露出している唇で、乳首に舌を這わせていた。

無声音の画像で、このような行為を見ているというのは、奇妙な感覚だった。どこか遠い所で、非現実的なことが起きている。絵空事を見ている感覚なのだけど、ラテックスとゴムに包まれた人間が、嬲っている女体は、まさに美絵さんだと云うのだから、どうも心が定まらず、浮き足立った気分に陥っていた。

ゴムとラテックスの人間の動きが激しくなってきた。美絵さんらしき女体の動きも激しくなってきた。何かを求めるような感じで、女の両手がゴムとラテックスの背中に回された。

あきらかに、女体は感応しているようだった。ゴム手袋に支配されている下半身は、膝を立てて、何かを求めるように蠢いた。

女体が美絵さんだと、圭は確信していたが、私には美絵さんだと確信は出来なかった。女の人の顔の部分には強くボカシが入っていて、まったく判別不可能だった。

「入念に作業しているね」私は思わず口にした。

「アドビのアフターエフェクツだな…」

「技術力もあるってこと?」

「まあね。それに、俺、この男を知っているよ」

「このゴム男が判るの?」

「判る…」

「そうなんだ、知り合いってことね」

「そう、美絵の昔の恋人」

 ゴムもラテックスも役に立たないのに、どうして、こんな窮屈なものつけて、男は頑張るのか判らないと思ったが、口には出さなかった。

画面がまた黒くなり、次のシーンが映し出された。次の画面で男は、ゴムもラテックスも脱ぎ去っていた。

ただ美絵さんだと云う女性も、その男の顔もモザイクが施され、少なくとも私には、この男女を特定することは出来なかった。
つづく


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プロフィール

鮎川かりん

Author:鮎川かりん
小説家志望、28歳の女子です。現在は都内でOLしています。出来ることなら、34歳までに小説家になりたい!可能性が目茶少ないの分ってっているのですけど、挑戦してみます。もう、社内では、プチお局と呼ばれていますけど…。売れっ子作家になりたい(笑)半分冗談、半分本気です。
初めての官能小説への挑戦ですけど、頑張ってみます。是非応援よろしくお願いします。

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