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終着駅58 


 第58章

 母のパニックもおさまり、数日が経った。母は、一時的にショックを大きく受ける人だけど、数日寝込むと、問題は何ひとつ改善していなくても、改善したように思い込める人だった。つまり、平和で平凡な女だった。

 有紀からメールが入った。1週間の間に2通のメールは、有紀にしては、珍しい現象だった。

 『 この間のメールで書きそびれたのだけど、私の心の中にしまっておくことが辛いので、吐き出してしまいます。涼ねえさんが、そのことをどう思い、どのように受けとめ、どのように対処するのか、それは私にはまったく判りません。ですから、聞かなかったことにするのも、姉さん次第です。話さなくても良いことだと、何度も自問自答したのですが、やはり、姉さんには知る権利があると思う結論に至ったので、メールしています。圭のことです。姉さんの認識では、圭が初心な弟に見えていたのでしょうけど、圭は、そんなに初心な男ではないと云う事実です。大学時代の圭はイケイケな男だったのです。私の顔見知りの友達の中にも、二人ばかり圭にぞっこんだった女の子がいます。おそらく、同年や年下の女の子の間でも、かなりブイブイしていました。私の聞く限り、かなり女出入りの激しい生活をしていたと云う事実です。このことは、私が圭を誹謗中傷するために語るわけではありません。私自身、ある時点から、圭にぞっこんだったわけですから、圭がイイ奴とか、悪い奴とかの話ではありません。ただ、涼ねえさんが、誤解したまま、圭との関係を維持するんじゃなく、事実は事実として受け止めた上で、圭をみつめて欲しいな、と云うことです。圭は、現在は落ち着いる筈です。家庭を持ち、憧れの涼ねえさんとも関係が成立して、何ひとつ不満はなくなっていると思っています。あの、セックスするために生まれてきたような、器用で魅力的な男。そのような圭を、どう扱うは、涼ねえさんの考え一つだと思います。妹であり、女である、同志のような女、有紀より 』

 私は、有紀のメールを読みながら、涙が滲んだ。何のための涙なのか、よくわからないけど、滲んだ涙が眼尻から僅かに頬に流れた。

 圭は嘘をついていた。それも、物事のはじまり自体が虚構から始まっていたのだ。何事にも器用で、頭もよく、要領のいい弟だったが、姉である私にまで、その能力を発揮して、まんまと罠にかけたのだから、罪悪人なのだろう。

 私は、有紀のメールを見つめながら、茫然としていた。圭に対して、どのように対応するかどうかを考えるのではなく、有紀が知らせてくれた事実関係を飲み込む段階で抵抗していた。

 圭が美絵さんとセックスが出来ないと告白した時、たしかにセックスをしたことがないと、私に語った。そして、いまだに結婚間近の美絵さんとセックスが出来ないと言った。色んな経緯があったが、最終的に私が教える羽目になった。

 つまり、圭は大学時代にやりまくっていたにも拘らず、童貞だと嘘をついたことになる。

 180度違う自分をつくり上げて、私にセックス・カウンセラーをさせたのだ。つまり、結果的に、私を作り話に巻き込んで、私とセックスしただけ、と云うことになる。

 ここまで考えてみると、圭はとんでもない極悪人と云うことになる。自分を童貞と偽り、セックスの仕方を教えてほしいと偽り、単に実の姉である私の肉体を弄んだことになる。

 しかし、と思った。私を騙したのは事実だけど、私を抱くために、圭は100万円を差し出した。あのお金は単に、私の肉体を買うためのお金だったのだろうか。だとすると、自己評価は別にして、一般論として高額すぎる。

 また、その後の圭と美絵さんの関係では、私のカウンセラー後に、初めて二人の肉体関係が成立したことは、美絵さんの口から正直に語れている。つまり、圭は結婚を予定している相手の女性、美絵さんに対してだけは“初心(うぶ)”だったと云うことになる。

 有紀が敢えて私に嘘の情報を流すわけはなかった。

 私と初めて結ばれた時も、その日のうちに、圭は性的行為において、天賦の才をみせ、私の肉体を翻弄していた。あれは、たしかに天賦の才と云うより、手慣れた男の性戯であったのかもしれない。

 判っている事実を整理しようと思った。

 (1)まず初めに、圭は真剣に童貞だという嘘をついた。

 (2)セックスを教えて貰うお礼に100万円支払うと言った。*現実に支払われている。

 (3)はじめは、童貞らしい行動をしていたが、後半では熟練な行為をしていた。

 (4)しかし、すべてが嘘でないことは、婚約者の美絵からの証言がある。美絵と圭は、私と圭との関係成立後に、初めて結ばれている。

 (5)有紀の情報によれば、圭は昔から私に憧れていて、水着の写真を後生大事に所持していた。

 (6)有紀が参加してきた3人の関係の時も、圭は物怖じしない行動に出ていた。今になってみれば、手慣れていたとも受けとめられる。

 (7)奇妙な差出人不明の手紙が届いたことは、圭の複雑な動きに関係があるのかどうか、これは留保案件。

 私は、思い出す事実関係を書きだした。そして、それを見つめていることで、圭の正体が現れるのを期待した。
 つづく

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プロフィール

鮎川かりん

Author:鮎川かりん
小説家志望、28歳の女子です。現在は都内でOLしています。出来ることなら、34歳までに小説家になりたい!可能性が目茶少ないの分ってっているのですけど、挑戦してみます。もう、社内では、プチお局と呼ばれていますけど…。売れっ子作家になりたい(笑)半分冗談、半分本気です。
初めての官能小説への挑戦ですけど、頑張ってみます。是非応援よろしくお願いします。

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