2ntブログ

スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

茶色い小瓶が姿を現した あぶない女80


第80章

家に戻ると部屋に飛び込んだ。

女房から“朝ごはんは?”と声を掛けられたが、“食べてきた”と咄嗟に嘘が口をついていた。

机の中を、隅から隅まで引掻き回したが、当然のように、あの小瓶は見つからなかった。

たしか、小物類や雑品をしまっておいた箱が三つくらいあったはずだった。

しかし、部屋の物入れを覗いてみたが、その箱は当然のようになかった。

何度かの引っ越しの折に捨てたのなら問題はないのだが、捨てたという確たる記憶もなかった。

俺は、暫し考えた上で、女房に箱の所在を尋ねてみた。

「どうだったかしら、一つか二つくらいなら、北側の部屋の物入れに押し込めたかもね。たしか、ここに来たとき預かった記憶があるけど、ハッキリはしないわ。探してみて」

女房は、なんら興味のない声で答えた。

今日ほど、その女房の俺に対する無関心な声音が、鳥のさえずりのように聞こえた。

記憶にある箱が二つ見つかった。俺はそそくさと、その二つの箱を抱えると、部屋に閉じこもった。

たしか、預かった瓶は茶色だった。その中に、食塩より細かい顆粒状の物質が入っているのを、恐る恐る見た記憶が蘇えった。

しかし、この毒物は風味が独特で、アルカリ性も強く、食物や飲み物に混入させて、人を殺そうとしても、多くは気がついて吐き出すリスクがあった。

安上がりなミステリー小説のように、簡単に人を殺すことは出来ない代物のはずだった。

片山亮介は、一気に飲み干したのだろうか、いや、そうではないだろう。

おそらく、覚せい剤の常用者であった可能性があるので、静脈注射液の中に混入されていた可能性が、最も高かった。

だとすると、敦美が殺せる可能性は低いと言えた。

覚醒剤仲間が、意図的に渡した覚醒剤のアンプルの中に、青酸カリを混入させていた可能性が強かった。

つまりは、何らかの取引のトラブルが、殺意だったと考えるのが妥当なのだろう。

安易に、青酸カリがあるから殺人が出来るわけではないのだから、敦美である可能性は排除出来た。

いや、今は、そういう想像をしている場合ではなかった。

あの茶色の小瓶を探さなければならなかった。一つ目の箱に、その瓶はなかった。

残りのもう一つの箱にないと云うことは、おそらく既に捨てたと考えることが出来たが、家宅捜索で見つかるリスクがないわけではなかった。

所有者も忘れていたものを、警察の家宅捜索で発見されることは大いにあるわけで、出来ることなら、現物を見つけて、自分の責任で廃棄しておきたかった。

二つ目の箱の中を探っていくと、茶色い小瓶が姿を現した。

丁寧に、ビニールの袋に何重にも包まれて、その小瓶はあった。

俺は安堵した。

しかし、安堵の次に、新たな恐怖が頭をもたげた。これから、この瓶と中身を別け、安全に捨てる作業が待ち構えていることを知っていた。

早々に、自分の手元から遠ざけたい気持ちになったが、人目のある時に、マンションのごみ置き場に行って捨てる気にもなれなかった。

つづく


いつもクリックありがとうございます!
ブログ村 恋愛小説(愛欲)

アダルトブログランキングへ






コメントの投稿

非公開コメント

プロフィール

鮎川かりん

Author:鮎川かりん
小説家志望、28歳の女子です。現在は都内でOLしています。出来ることなら、34歳までに小説家になりたい!可能性が目茶少ないの分ってっているのですけど、挑戦してみます。もう、社内では、プチお局と呼ばれていますけど…。売れっ子作家になりたい(笑)半分冗談、半分本気です。
初めての官能小説への挑戦ですけど、頑張ってみます。是非応援よろしくお願いします。

最新記事
rankig
応援してくださいね!

FC2 Blog Ranking

目次

cover-1.jpg

人妻のからだ 』(中編)

終着駅 』(長編連載中)

リンク

最新コメント
月別アーカイブ
カテゴリ
カレンダー
04 | 2024/05 | 06
- - - 1 2 3 4
5 6 7 8 9 10 11
12 13 14 15 16 17 18
19 20 21 22 23 24 25
26 27 28 29 30 31 -
全記事表示リンク

全ての記事を表示する

アルバム
RSSリンクの表示
検索フォーム
QRコード
QR