第37章かなりの長文だから、レスポンスは夜が明けてからだろうと、パソコンを閉じて、読みかけの本を開いた。
推理小説のイントロ部分を読みながら、ストーリーの展開が見えていた。読む時間が無駄な小説かもしれないと思いながら、ページをパラパラと捲った。
やはり、名前を聞いたことがない作家の作品はこんなものだろうと落胆しながら、ページを飛ばした。
ある同人誌に頼まれて、”隠れた作家発掘”と云うコーナーと云う連載に紹介する仕事の延長線だった。当然、定価で本を買っていたら、赤字になりかねないので、ブックオフの百円コーナーからつまんでくるのだが、評論に至る作家は滅多に見つからない。
それでは、隠れた作家発掘に穴が開くので、最近では小説家と云うカテゴリーを外してもらって、何とか息をついているが、実のところ、それでも、コーナーを埋める作業は青息吐息だった。
期待薄と思っていた、その女流作家の作品が思わぬ展開を見せはじめた。小説は、ちゃんと読めと主張していた。
こんな感じで、メッセージを発信する作品は、限られている。今回は幸運だった。
どこで展開が変わったのか、変わり方に不自然さはないか、入念にストーリーを追いかけはじめた。
文章は可もなく不可もなし。まあ読むに耐えられるレベルにあった。
後はストーリー次第だった。そのストーリーが目を引いたのだから、今月の隠れた作家の仕事は半ば終わったも同然だった。
十年間電池を取り替えていない掛け時計の針が午前五時を指していた。寝る前に、NYの為替と株の状況を確認しようとパソコンを開くと、メールの着信があった。
敦美からのメールだった。
“優しいメールありがとう、とても嬉しかった。多分、アイツの目的は、父の遺産だと思います。
今のところ、銀行に入っている額は2億円程度ですが、その他に、父が創業した会社の株や住んでいた家等を処分すると、あと4億くらいあるそうです。父の会計士だった人に手続き頼んでいます。
エッチの目的は、殆どない筈です。おそらく、愛人がいる筈です。ただ、あの薬のせいで、私がイヤラシクなることで、偶然でしょうが、見えない綱で縛りつけられる事も出来るのだ、と思っているでしょう。
あなたの質問ですが、無論、答えは1です。
速攻で逃げ出したい気分です。でも、そのために、具体的に、どのようにすればいいのかが分からないだけです。
ぜひ、一日でも早く、アイツから抜け出す手助けして下さい。ほかに頼めそうな人もいないので、よろしくお願いします”
敦美のメールは、まともだった。
細かい部分で注文はあるが、まあ、爆弾女だと思っていた敦美からのメールなのだから、大幅に割り引く必要があった。
俺は早速、返信した。
“そうだね、俺が協力可能なことなら手助けするよ。あまり、頼られ過ぎるのは無理だけど、一定の範囲、君が、最低限一人出来る状況になるまでの、手伝いは可能だと思うよ。夜に会うのは、色んな意味で問題があるだろうから、昼間が良いでしょう。
明日は、用事があるので、明後日、この間と同じ時間に、同じ場所で会いましょう。
もし、都合が悪いようなら、君の都合の良い日時知らせてください”
後のことは、すべて、会った上で決めればよかった。メールで、細かなことを話すのは、行き違いが起きそうな相手だった。
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