第14章 敦美がこのまま眠りに入ってくれるかどうか判らなかった。
覚せい剤を使っている人間の眠りは浅い傾向が強い。
おそらく、2、30分で目を覚ます。俺は全裸の敦美にバスタオルを掛けながら迷っていた。
……コイツを残してホテルを出るのは拙いだろうし、フロントに、俺だけ出ると説明するのも面倒だし……
やはり、起きるのを待って、一緒に連れ出すしかないなかった。
俺は、バスルームで、歯を磨き、手を洗い、使ってもいない股間まで、ご丁寧に洗って、いつでも出られる準備を整えた。
20分が経過した。
テレビをつけ、ボリュームを上げた。
しかし、敦美が起きる気配はなかった。テレビの音は、俺の鼓膜が耳鳴りをさせる効果しかなかった。
バスタオルから肌け、敦美の孤立したような乳房が息づいていた。
さっきまで気づかなかったが、小ぶりの乳首のまわりに、大きな乳輪が浮かび上がっていた。
そのぼんやりとした輪は、わずかに隆起し、乳房との境界を示していた。
白人に多く見られる乳輪の形状だった。
少なくとも、俺が見てきた中に、このような乳輪の姿を見せていた女体はなかった。
いや、若い娘の中には、乳首のまわりを、腫れたような乳輪が囲んでいるのを見ることがあるが、成熟するに従って、消えてしまう。
それにしても、この女は、何を考えて寝ているのだろう?
亭主の犯罪的裏切りを、この女はどんな受けとめ方をするのか。
自分への仕打ちへの、判断する能力は残っているのか。
俺は、ベットに投げっ放しにしていたバイブを拾い上げて思った。
黒いバイブに残された敦美の粘液が干からび、乳白色の名残が、宴の生々しさを証明していた。
予定の3時間が近づいていた。
電話で催促されるのは面倒だった。
もう、女が自力で起きることを期待するのは無理だった。叩き起こす以外に方法を思いつかなかった。
「オイ、時間だ。起きな」敦美の身体を揺さぶった。
予期したように、敦美の眠りは浅かった。
「寝ちゃった~、気持ちよかった、ねえ~もう一度しよう」一気に目覚めた敦美は、ギラつく瞳で、媚を送ってきた。
「馬鹿言ってんじゃねえよ、時間なんだよ。さあ服を着るんだ」
「延長すればいいでしょ」
「時間が無いのはコッチだよ、俺の時間がないんだ」
「キャンセルしてよ、やろうよ。ねえねっ」敦美は、俺を捕まえようと腕を伸ばした。
つづく
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