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終着駅480


第480章

翌日、有紀が、昼を過ぎても起きてこないので、部屋をノックした。返事がないので、入ってみると、到底、女優滝沢ゆきとしては考えられない寝姿で、熟睡していた。

何時に寝たのか判らないが、タバコの臭いが消えていないので、明るくなってから寝たのは確実だった。いつもなら、そのまま寝かせておくところだったが、劇団の子が、家具の写真を持って吉祥寺の家に来るはずなのだから、ほっておくことも出来なかった。

何度も揺さぶり起こしたが、頑強に目覚める気配がなかった。

我々は、朝ごはんも済ませ、昼ご飯を食べようかと云う時間なのだから、何とかしなければならなかった。

軽くノックして、母が入ってきた。

「まだ起きないの?」

「寝かしておいても良いんだけど、有紀が呼んだ子が、吉祥寺の家の方に来るからさ」

「有紀!」母は、有紀がどのような寝姿でいるかも構わず、布団を思いっ切り剥いだ。

「あなた、夕方になるわよ!」母は、容赦なく有紀のお尻を叩くと、上半身を無理やり起こした。

手荒な扱いに、酷く不機嫌だった有紀も、徐々に、状況が把握できたらしく、ぶつぶつ言いながらも、自力で上半身を起こした。

「有紀、何時に、彼女、来ることになっていたの?」

「あぁそうだ、ヤバイ。いま、姉さん何時なのよ?」

「1時近いよ」

「間に合うかな、3時なんだよ」

「大丈夫じゃない、間に合うよ」

「おにぎり作るから、車の中ででも食べたらいいわ」剛腕の母が戻ってきて、口はぞんざいだったが、おこないは親切だった。

有紀は化粧も適当に、サングラスを掛けて、車の中で再び眠り出した。膝から、ノートパソコンが落ちそうなので、私が取り上げると、一瞬目覚めたが、また、深い眠りに陥った。

到底、母のおにぎりを頬張る状況にはなかった。よほど、シナリオに、頭と神経をフル回転させていたのだろう。

私は、執筆中の有紀を見たことはなかったが、作家と云うのは、想像していた以上に過酷な仕事なのだと、実感した。

シナリオを書くことで、性根尽き果てているのに、そのシナリオに沿って演出をし、主演を張る。

考えただけでも、加重労働に思えた。

ここ一年近くは、私の問題で、有紀に、更なる過重な労働と気配りを求めていたのかと思うと、心が痛んだ。

……そうだ、劇団の事務が面倒だと言っていたけど、私に出来ることなら、手伝うくらい当然なのかも……

タクシーを降りる段階になると、一気に目覚めたのだろうか、たしかな足取りで、歩きだした。

「2時半か、顔くらい洗えそうだね」いつもの有紀に戻っていた。
つづく

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鮎川かりん

Author:鮎川かりん
小説家志望、28歳の女子です。現在は都内でOLしています。出来ることなら、34歳までに小説家になりたい!可能性が目茶少ないの分ってっているのですけど、挑戦してみます。もう、社内では、プチお局と呼ばれていますけど…。売れっ子作家になりたい(笑)半分冗談、半分本気です。
初めての官能小説への挑戦ですけど、頑張ってみます。是非応援よろしくお願いします。

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