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第126章
敦美がマンションに持ち込もうとする荷物が、予想以上に多くなった為に、結局一旦中井のマンションに戻る羽目になった。
「あぁ、持ってき過ぎちゃったね」
敦美は、夢中になって、あれもこれもと強大なポリ袋に詰めこんだ、衣類を、次々とリビングで開き始めた。
「まだ着られる高級そうな服だから、いずれにしても持ってくることになるのだから、無駄と云うことはないさ」
「そうよね。これを整理するドレッサーも買わなければならないし、この部屋、少し手狭かもね」
「それに、隣の声も聞こえ過ぎだしね」
「そう、こっちの声も、聞く気になれば聞こえるってことだもんね」
「そういうことになるね」
「ねぇ、早速で悪いけど、もう少し大きな部屋、探して貰えないかな」
「いいよ。不動産手数料は無駄になるけど仕方ないね」
「そんなの良いよ、月収450万でしょう」
敦美はあっけらかんと、450万円と言ったが、彼女は俺の取り分を忘れているのだろうか。
近々、何かの折に、その辺は、再確認しておいた方がよさそうだった。
それは別にして、敦美がリビングから寝室まで、洋服が皺が寄らないように拡げてくれたお陰で、俺の居場所は限定されてしまった。
ダイニングの椅子に腰を下ろして、敦美の動きを追いかけながら、ポケットのマイクロSDカードの存在を気にした。
このポケットに突っ込まれた、片山のマイクロSDカードから、鬼が出るのか蛇が出るのか、ワクワク感があった。
会ったこともない片山亮介と云う男の存在が、俺の中で大きな位置を占めはじめた。
“片山ノート”というスパイじみた情報ファイルにも興味があったし、片山が命をかけてでも守ろうとした情報は、宝の山のように思えてきた。
敦美から、早く解放されたかった。速攻で家に帰って、このポケットの中身を復元したかった。
データは、よく見るマイクロSDカードなので、ソフトはWindowsに違いなかった。まさかMacOSということはありえないと思った。片山の部屋の雰囲気から、Macの臭いはしなかった。
つづく