第61章「目を閉じて、眠れる美女のように気持ちになって」
「目を閉じることは出来るけど、美女にはなれそうもないけど、すべてお任せします」
俺は、目を閉じ、何が始まるのか、かなり精神的に緊張を強いられた。当然のことだが、俺の男が急速にオスになることはなかった。
「歳の割には肌が綺麗ね」
寿美は、胸から腹部の辺りに指を這わせて、つぶやいた。
特に答えなければならない呟きではないのだからだから、言葉は返さなかった。
寿美の指は湿っていた。
風呂上りの所為か、欲情している所為なのか、そもそも湿っぽいのか、判断はつかなかった。
呟くこともなくなった寿美の指が下腹部から恥骨の辺りに下がってきた。いよいよ股間の検査に突入かと身構えた。
しかし、期待は裏切られた。太腿から足首の間を何気に擦っていた指に幾分力が込められた。
右の足首に指を当て、揉みはじめた。軽い痛みと心地よさが交互に訪れた。
暫くして、そこがリンパであることを悟った。
相当前になるが、一流のマッサージ師の施術を受けた時、そこを入念に揉まれた記憶が甦った。
わずかな感覚だから、明確にわかるものではなかったが、足首から脹脛にかけて軽くなった感覚があった。
「まだ、フニャフニャね」唐突に寿美が、また呟いた。
「申し訳ない」今度はひと言つぶやいた。
「いいのよ、ゆっくり時間をかけてね」俺は、その言葉に目を閉じた。
足首を解放した寿美の指と腕は、リンパマッサージ師と同様の動きで、足首から脹脛にかけて、適度な強さで擦りあげる行為を繰り返した。
リンパマッサージの真似事をしているレベルではなかった。あきらかに、本格的な施術な行為で、マッサージ師と変わらないことに気づいた。
「私ね、鍼灸の資格があるのよ」寿美は、ひざ裏のリンパを揉みながら、過去を思い出すように話した。
「どうりで、本格的だと思ったよ」
「その頃はまだ堅気な仕事をしていて、結婚の約束までした男がいたのよ」寿美の思いで話に、どのように応じていいのか迷った。
「そうなのか……」
「話さなくて良いの。黙って聞いてて……」
寿美の指が鼠蹊部のリンパに当てられた。
一瞬ドキリとしたが、その指は、あくまでリンパマッサージの一環に過ぎなかった。
寿美の指の動きに合わせてペニスが揺れ動いていたが、勃起の反応はなかった。
その無反応を寿美がどのように受けとめているのか、知る由もなかった。
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