第38章“明後日ですね。分かりました。今にでも逃げ出したい気持ちですけど、我慢します。もう、薬は飲んでいません。だから、少し鬱っぽくなっていますけど、嫌いにならないで下さい。ちなみに、アイツには、させていません”
敦美という女は、いつ寝ているのか頭をひねる速さで返事を返してきた。書き順は支離滅裂だが、言おうとしている要点は伝わるメールだった。
こうなると、敦美の、手の平を返したような態度が気になった。
悪事を企んでいる旦那の側は、注意深いに違いないのだから、今まで通り、やせ薬を飲み、欲情した女でいる方が安全だった。
しかし、薬を続けて飲めと注意するのも奇妙だった。
出来ることなら、薬で欲情した女房を演じ切れと言いたいところだが、それを伝えることで、こちらへの信頼感が、揺らぐリスクがあった。
しかし、何も注意せずに、旦那に早々に気づかれるのも、無責任過ぎる気がした。
この際、どのような注意が適切なものか、酷く迷った。
急に生理不順になったとか、作り話をするのが良いのか。風邪をひいて具合が悪いとか、そのほうがマシな言い訳なのか、かなり迷った。
しかし、鬱な状況に至っている敦美に、上手に嘘を言って、演技しろとアドバイスすること自体、無謀な賭けだった。
“もし、可能であればだけど、明日中に、そこからの逃げ出す手はあると思うよ。
有り金もって逃げ出すことが可能なら、それが一番安全かもしれない。
思い出のある物を持てるだけ持って、先ずは逃げ出すのも、一つの手だよ。
俺の予感だから、たしかではないけれど、君の演技だと、直ぐに旦那さんにバレル危険があると思うんだよね。
金さえあれば、物は幾らでも、後から買えるわけだしね。
どこでもいいから、ホテルにチェックインするのが安全策かも”
敦美に、意味が通じるかどうか判らなかったが、俺はメールを送信した。あとは、野となれ山となれ、幾分誠実さには欠けているかもと思いながら、睡魔に襲われた。
つづく
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